「残夢 大逆事件を生き抜いた男 坂本清馬の一生」(鎌田慧)公開中
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▼明治維新後、新政府の要職は薩摩・長州出身者によって占められ、裁判官と検察官を統括する司法省(現、法務省)は非エリート官僚中心の三流官庁として誕生した。その三流官庁が浮上したのは、1909年の日糖疑獄と翌年の大逆事件だった。大逆事件で<検察は皇室の危機を未然に防いだ功績で司法部内での優位を確立し、政治的影響力も飛躍的に増大させた。 <検察は疑獄と思想事件の摘発を繰り返しながら政財界や他省庁への影響力を強めていく>(『冤罪法廷』魚住昭著、講談社)
数々の冤罪事件を生み出す検察の体質は約100年前から同じ。事件をでっちあげて特定の政治的勢力に弾圧を加え、時代の風潮を替えてしまう。始末の悪いことに検事たちは「良いことをしている」と確信しているから暴走する。検察の問題だけではない。大逆事件は多くのことを教えてくれる。大逆事件は今も生きているのだ。
今週から鎌田慧さんの新連載「残夢――坂本清馬の一生」が始まった。資料集めや高知取材など準備に数年をかけた渾身の力作にご期待ください。(伊田浩之)
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